〜着物で故人を偲ぶ、心づかいのかたち〜
冠婚葬祭のなかでも、とりわけ「葬儀」や「法事」は装いに慎重さが求められる場面です。
特に着物で参列する場合、「何を着ればよいか分からない」「失礼がないか不安」といった悩みを抱える方は少なくありません。
この記事では、法事やお悔やみの席にふさわしい着物の選び方やマナーを、初心者にもわかりやすく解説します。
美しい着物文化を尊重しながら、故人や遺族への心づかいを形にできる、品格ある装いを一緒に学んでいきましょう。
目次
- 法事・お悔やみの席での「着物」の意味とは?
- 葬儀・告別式で着る喪服の基本
- 法事(初七日〜三回忌以降)の着物マナー
- 帯・草履・小物類の正しい選び方
- 季節と気候に配慮した着物コーディネート
- 親族・参列者別|立場による着物の違い
- 着物での立ち居振る舞いと気配りマナー
- よくあるNG例とその回避策
- 法事やお悔やみの席での着物マナーと正しい装いまとめ
1. 法事・お悔やみの席での「着物」の意味とは?

お悔やみの席で着物を着ることは、単なる服装選びではありません。
- 故人や遺族に対する敬意と追悼の意を示す
- 静かで落ち着いた装いは、場の空気を乱さない
- 日本の伝統文化として、品格ある弔いの装いができる
特に年配の方や寺院関係者の参列が多い場では、着物姿が自然に受け入れられ、好印象につながることもあります。
2. 葬儀・告別式で着る喪服の基本

葬儀や告別式では、もっとも格式の高い「正式喪服」が求められます。
◇ 正式喪服とは?
項目 | 内容 |
着物 | 黒無地染め抜き五つ紋付き(喪服専用) |
帯 | 黒喪帯(名古屋帯または袋帯) |
長襦袢 | 白またはグレー系 |
帯揚げ・帯締め | 黒で無地のもの |
足袋・草履 | 白足袋・黒の布製草履 |
喪服用の着物は、「家紋入りの黒無地」で、最も格式が高い正礼装です。
紋の数が「五つ紋」であることがポイント。家紋がない場合はレンタルや一つ紋でも対応可ですが、なるべく正式なものを選びましょう。
3. 法事(初七日〜三回忌以降)の着物マナー

法事は時期によって装いの格が少しずつ変化します。
◇ 初七日〜四十九日までの法要(忌明け前)
- 基本的には葬儀と同じ喪服で出席
- 略喪服として一つ紋付き黒無地+黒喪帯でもOK
◇ 一周忌・三回忌以降の法要
- 落ち着いた色無地(一つ紋)や地味な江戸小紋
- 帯は黒無地または控えめな柄の名古屋帯
- 礼装感が残る装いが望ましい
三回忌以降になると、少しずつ色を取り入れた「略喪服」での参列が一般的になりますが、派手な柄や華美な装飾は厳禁です。
4. 帯・草履・小物類の正しい選び方
着物だけでなく、帯や小物にも細かなマナーがあります。
◇ 帯の選び方
シーン | 帯 |
葬儀・初七日 | 黒喪帯(光沢なし) |
一周忌以降 | グレー・紺系などの控えめな名古屋帯 |
金銀や鮮やかな色は避けましょう。
◇ 小物類の基本ルール
- 草履:黒の布製(光沢なし)
- バッグ:黒の和装バッグまたはサブバッグ
- 帯締め・帯揚げ:黒の無地(控えめな素材)
レースやビジュー付き、革製などの小物はNGです。
香水やネイルも控えめに。無香料が基本です。
5. 季節と気候に配慮した着物コーディネート
季節によって着物の素材や構成も変わります。
季節 | 着物素材 | 裏地 |
春・秋・冬 | 袷(裏地付き) | 通常の黒喪服で対応可能 |
夏(6月中旬〜9月初旬) | 絽や紗の黒喪服 | 薄物の喪服が必要 |
夏場は暑さ対策として絽の喪服を用意するのが望ましいです。
ただし地域や葬儀社によっては袷でも問題ないこともあるため、事前に確認を。
6. 親族・参列者別|立場による着物の違い
◇ 親族(喪主側)の女性
- 正式喪服(黒無地五つ紋)
- 黒喪帯、黒草履、黒バッグ
- 着物の中でも最も格式が求められます
◇ 友人・知人として参列する場合
- 略喪服(黒無地一つ紋 or 色無地)
- 地味な名古屋帯
- 過度に目立たないよう注意
「主役ではない」ことを意識し、あくまで故人と遺族を立てる装いが大切です。
7. 着物での立ち居振る舞いと気配りマナー
お悔やみの場では所作も重要です。
◇ 控えめな動作を心がける
- 歩く際は静かに、音を立てない
- 手を添える動作や一礼を丁寧に
- 正座や焼香時は袖が乱れないよう押さえる
◇ 髪型とメイクもシンプルに
- 髪はまとめ髪にしてすっきりと
- メイクはナチュラル、口紅はベージュ系
※派手なピアスや髪飾りは控えましょう。
8. よくあるNG例とその回避策
NG行動 | なぜNG? | 回避策 |
色柄の着物で参列 | 華やかすぎて場にそぐわない | 地味な色無地または喪服を選ぶ |
派手な帯や帯締め | 弔意を表すには不適切 | 黒または地味な配色のものを使用 |
香水をつける | 焼香の香りを邪魔してしまう | 無香料に徹する |
ブランドロゴのバッグ | 喪の場にそぐわない | 和装用のシンプルな黒バッグにする |
9. 法事やお悔やみの席での着物マナーと正しい装いまとめ
法事やお悔やみの場では、装いが故人への最後の贈り物となることもあります。
着物という日本の伝統衣装をまとって参列することは、静かで深い敬意の表現です。
最も大切なのは、「場にふさわしい気配りを忘れないこと」。
格式や季節、立場に応じた着物選びを心がけることで、どんな場でも恥ずかしくない、品格ある女性としての振る舞いができます。
弔意を込めた丁寧な装いで、心を込めて故人を偲びましょう。
(記事制作者:廣田 )
コメント