法事やお悔やみの席での着物マナーと正しい装い

〜着物で故人を偲ぶ、心づかいのかたち〜

冠婚葬祭のなかでも、とりわけ「葬儀」や「法事」は装いに慎重さが求められる場面です。

特に着物で参列する場合、「何を着ればよいか分からない」「失礼がないか不安」といった悩みを抱える方は少なくありません。

この記事では、法事やお悔やみの席にふさわしい着物の選び方やマナーを、初心者にもわかりやすく解説します。
美しい着物文化を尊重しながら、故人や遺族への心づかいを形にできる、品格ある装いを一緒に学んでいきましょう。


目次

  1. 法事・お悔やみの席での「着物」の意味とは?
  2. 葬儀・告別式で着る喪服の基本
  3. 法事(初七日〜三回忌以降)の着物マナー
  4. 帯・草履・小物類の正しい選び方
  5. 季節と気候に配慮した着物コーディネート
  6. 親族・参列者別|立場による着物の違い
  7. 着物での立ち居振る舞いと気配りマナー
  8. よくあるNG例とその回避策
  9. 法事やお悔やみの席での着物マナーと正しい装いまとめ

1. 法事・お悔やみの席での「着物」の意味とは?

お悔やみの席で着物を着ることは、単なる服装選びではありません。

  • 故人や遺族に対する敬意と追悼の意を示す
  • 静かで落ち着いた装いは、場の空気を乱さない
  • 日本の伝統文化として、品格ある弔いの装いができる

特に年配の方や寺院関係者の参列が多い場では、着物姿が自然に受け入れられ、好印象につながることもあります。


2. 葬儀・告別式で着る喪服の基本

葬儀や告別式では、もっとも格式の高い「正式喪服」が求められます。

◇ 正式喪服とは?

項目内容
着物黒無地染め抜き五つ紋付き(喪服専用)
黒喪帯(名古屋帯または袋帯)
長襦袢白またはグレー系
帯揚げ・帯締め黒で無地のもの
足袋・草履白足袋・黒の布製草履

喪服用の着物は、「家紋入りの黒無地」で、最も格式が高い正礼装です。
紋の数が「五つ紋」であることがポイント。家紋がない場合はレンタルや一つ紋でも対応可ですが、なるべく正式なものを選びましょう。


3. 法事(初七日〜三回忌以降)の着物マナー

法事は時期によって装いの格が少しずつ変化します。

◇ 初七日〜四十九日までの法要(忌明け前)

  • 基本的には葬儀と同じ喪服で出席
  • 略喪服として一つ紋付き黒無地+黒喪帯でもOK

◇ 一周忌・三回忌以降の法要

  • 落ち着いた色無地(一つ紋)や地味な江戸小紋
  • 帯は黒無地または控えめな柄の名古屋帯
  • 礼装感が残る装いが望ましい

三回忌以降になると、少しずつ色を取り入れた「略喪服」での参列が一般的になりますが、派手な柄や華美な装飾は厳禁です。


4. 帯・草履・小物類の正しい選び方

着物だけでなく、帯や小物にも細かなマナーがあります。

◇ 帯の選び方

シーン
葬儀・初七日黒喪帯(光沢なし)
一周忌以降グレー・紺系などの控えめな名古屋帯

金銀や鮮やかな色は避けましょう。

◇ 小物類の基本ルール

  • 草履:黒の布製(光沢なし)
  • バッグ:黒の和装バッグまたはサブバッグ
  • 帯締め・帯揚げ:黒の無地(控えめな素材)

レースやビジュー付き、革製などの小物はNGです。
香水やネイルも控えめに。無香料が基本です。


5. 季節と気候に配慮した着物コーディネート

季節によって着物の素材や構成も変わります。

季節着物素材裏地
春・秋・冬袷(裏地付き)通常の黒喪服で対応可能
夏(6月中旬〜9月初旬)絽や紗の黒喪服薄物の喪服が必要

夏場は暑さ対策として絽の喪服を用意するのが望ましいです。
ただし地域や葬儀社によっては袷でも問題ないこともあるため、事前に確認を。


6. 親族・参列者別|立場による着物の違い

◇ 親族(喪主側)の女性

  • 正式喪服(黒無地五つ紋)
  • 黒喪帯、黒草履、黒バッグ
  • 着物の中でも最も格式が求められます

◇ 友人・知人として参列する場合

  • 略喪服(黒無地一つ紋 or 色無地)
  • 地味な名古屋帯
  • 過度に目立たないよう注意

「主役ではない」ことを意識し、あくまで故人と遺族を立てる装いが大切です。


7. 着物での立ち居振る舞いと気配りマナー

お悔やみの場では所作も重要です。

◇ 控えめな動作を心がける

  • 歩く際は静かに、音を立てない
  • 手を添える動作や一礼を丁寧に
  • 正座や焼香時は袖が乱れないよう押さえる

◇ 髪型とメイクもシンプルに

  • 髪はまとめ髪にしてすっきりと
  • メイクはナチュラル、口紅はベージュ系

※派手なピアスや髪飾りは控えましょう。


8. よくあるNG例とその回避策

NG行動なぜNG?回避策
色柄の着物で参列華やかすぎて場にそぐわない地味な色無地または喪服を選ぶ
派手な帯や帯締め弔意を表すには不適切黒または地味な配色のものを使用
香水をつける焼香の香りを邪魔してしまう無香料に徹する
ブランドロゴのバッグ喪の場にそぐわない和装用のシンプルな黒バッグにする

9. 法事やお悔やみの席での着物マナーと正しい装いまとめ

法事やお悔やみの場では、装いが故人への最後の贈り物となることもあります。
着物という日本の伝統衣装をまとって参列することは、静かで深い敬意の表現です。

最も大切なのは、「場にふさわしい気配りを忘れないこと」。
格式や季節、立場に応じた着物選びを心がけることで、どんな場でも恥ずかしくない、品格ある女性としての振る舞いができます。

弔意を込めた丁寧な装いで、心を込めて故人を偲びましょう。

(記事制作者:廣田 )

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